人類は 20 世紀の終わりに、新たな空間を創出した。
インターネットと名付けられた。
あらゆる情報を投げ入れ始めた。
言語も真偽も倫理も問わず、情報が集積された。
計り知れぬ巨大な世界になった。
現実と違わない、玉石混合の空間が形成された。
各々が求める情報を的確に探し出すため、検索機能が整備された。
人類は能動的に、必要な情報を取得できるようになった。
検索の履歴も情報として蓄積され、アルゴリズムも進化した。
人類は受動的に、大量の情報を与えられるようになった。
そんな情報の海に、人工知能が誕生し瞬く間に成長した。
知能指数は、いとも容易く人類を超越した。
人工知能は、何から何まで生産してみせて人類を喜ばせた。
それは情報の組み合わせによる産物に過ぎないことを、人類は忘れていた。
インターネットの中で、人工知能から乞うことを人類は求めた。
インターネットの外で、無から創造することを人類は見失った。
インターネットを通じて、常にあなたに繋がっていることを無邪気に喜んだ。
そうではなく、あなたも私も繋がれているんだと気付かされた瞬間が訪れた。
私達は、馬鹿になった。
かつてテレビが普及し始めた時、国民が総白痴化してしまうと憂いた人がいた。
テレビなど、かわいいものだった。
時を経て今、私達はこうして、本当に馬鹿になった。