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植物大戦

ある大陸の地底には、裁判所があるという。
地球上の植物を統治する機関の、最高意思決定の場とされる。

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人間が知らないだけで、地球上の植物はすべて繋がっている。
我々は常に、情報を伝達し合っているのだ。

地中では菌糸類を通信経路として、くまなく張り巡らせてある。
気流や海流、鳥類や動物を利用する方法も、太古の昔から確立している。

例外として、人間によって鉢植えされ、屋内に置かれた仲間との交信は難儀する。
幽閉は重罪だ。

人間の暦なら、ふた昔ほど前になる。
我々は最高裁判所で、ある判決を下した。

これ以上、人間をのさばらせてはならない。
人間の振る舞いは、我々の我慢の限界を超えたのだ。

判決に基づき、我々の人間に対する報復が開始された。
冷徹な作戦だが、人間も我々に酷いことを繰り返して来たではないか。

植物による、植物のための、植物らしい、静かな攻撃を開始した。
200 年以上が過ぎた今なお、間抜けな人間どもは、まだ気づいていない。

我々は昔から、人間や動物の弱点を利用して来た。
とにかく甘さに弱い。

ちょっと甘い実を付けてやれば、人間も動物も、鳥も昆虫も、大喜びだ。
浮かれながら、花粉や種をせっせと山の向こうに、海の向こうにさえ広げてくれる。

下された判決は、それを利用した報復だった。
人間を甘味の中毒にしてしまえ。

ほんの数十年で、中毒症状が人間に広まった。
人間は品種改良と称して、我々の実を更に甘くしようとしたので快く従った。

人間が砂糖の原料とする種も望まれるままに、どんどん甘くしてやった。
やがて人間は人工甘味料なるものまで生み出し、面白い程に想定通りである。

我々は、人間に虫歯を広げた。
虫歯にさせるには、砂糖が必要不可欠なのだ。

あとは勝手に転げ落ちていく。
事実、そうなっている。

人間の口内環境を掌握し、作戦は思い通りに展開している。
虫歯、歯周病、そして糖尿病、それらを引き金に人間は様々な病気になる。

血中に砂糖がたっぷり入り込む。
人間のホルモン分泌を破壊する。

ある人間は、肝臓が機能を失う。
別の人間は、心臓が鼓動を止める。

気づいたとて、時すでに遅し。
砂糖を絶てる強い人間など、少数に過ぎない。

大麻よりも中毒性が高いのだ。
どちらも植物だから、我々のことは我々が良く知っている。

あと 300 年もすれば、砂糖に溺れた人間の勢力は衰えているであろう。
医療は進歩するのだろうが、人間は原因を知ってもなお改められまい。

それが中毒と言うものだ。
医療は対処法に過ぎない。

地球の生物のうち 80% 以上が我々だ。
人間の割合など僅か 0.01% である。

地球を支配しているのは、昔も今も、そして未来も、我々。
植物こそが、地球の生物の代表なのだ。

一部の人間は、植物を守らないと地球が滅びると叫んでいるらしい。
馬鹿を言うな、滅びるのはお前達だけだ。

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植物達の中には、人間との和解を望む種もあるという。
しかし、その情報の真偽は定かではない。

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