人間は肉食に寄った雑食だ。
腸の長さが、それを証する。
草食動物を見ればわかるように、生の草や実から栄養を摂ることは容易ではない。
複数の胃袋を持ったり、何度も反芻させたり、長く噛み続けたりして、ようやく消化吸収している。
実をついばむ鳥は、当然ろくに消化ができず、わずかに吸収するだけで糞として排出してしまう。植物は、それを利用して種の生存領域を広げていく。
一方の鳥は体を小型にして僅かな栄養で生きる戦略。
白鳥のような大型の鳥は、水藻を食べている。
草や実と違い、柔らかな水溶性の植物繊維だ。
それらを踏まえると、私達も生の草や実を消化吸収できるとは思えない。
煮炊きしたり、蒸したり、干したり、漬けたり、擦り下ろしたり、つまり口に入れる前にいくらか分解させることは、とても理に適っている。
生野菜や果物は熱で栄養が壊されていないことは確かだろうが、おそらく私達はちゃんと吸収できない。楽しむ食べ物と捉えたほうが良さそうだ。
日本人は、肉や魚、煮炊きした米や野菜、発酵させた大豆、柔らかい海藻、糠や塩に漬けた根菜も添えた食事で生きて来た。加えて、親はちゃんと噛むことを繰り返し子供に教育していた。
先人の知恵には、恐れ入るばかり。