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EP 2:届かぬ理由

各国にいくつかの会社を持っている中で、稼ぎ頭はアフリカ。
コンゴ民主共和国という、危ないイメージを持たれている国。

事実、都市部の治安は良くないし、紛争が繰り返されるし、致死率の高い感染症も度々。
有名なエボラ出血熱は、この国のエボラ川流域で見つかった。

ビジネスでも印象は良くない。
かつて社運をかけて進出した大手の日本企業は瞬く間に撤退、政府開発援助で架けた橋は貸し倒れ、誰かしらから声が掛かりコンゴに関わった日本人はほぼ全員が資産を騙し取られて終わる。
今日も欲に目が眩んだ面々が罠に嵌められているに違いない。

けれども、チャンスは大きい。
首都のキンシャサは2030年代にアフリカ最大の都市になると予測され、インフラへの投資は非常に活発。鉱物資源が豊かなことは紛れもない事実。
にもかかわらず、あまりに印象が悪く競合の進出がとても少ない。

今から一念発起して渋谷でラーメン屋を開業するくらいなら、キンシャサに行くことを私は強く勧める。圧倒的に成功率は高いと思う。

実際に私はコンゴで稼ぎ続けている。今日この瞬間も。
しかし、稼いだお金の日本への送金ができなくなった。

もちろん理由がある。そりゃそうだよなと、私も思う。
予想もできたので早くから手を打ったが、駄目だった。

多くの国にある仕組みだが、現地法人を設立するにあたり、外国人だけではできない。
一定の割合、現地の人に株式を持たせる条件が定められている。

私は懇意にしていた有力者に株式をシェアした。
会社は儲けを生み続け、もちろん配当も出した。

ある時、その有力者の名前が新聞の記事に載った。
彼は職を解かれ、刑事裁判の被告になると聞いた。

ところが、流石の有力者。
裁判が一向に始まらない。

被告であることに今も変わりはないが、彼は割と普通に暮らしている。
彼にとっての不自由は、許可なく国外へ出られないことくらいの様子。

私にとっての不自由が、許可なく国外へお金を出せなくなったことだ。
彼がシェアを持つ会社のお金は、その使途がとても制限されることに。

ささやかだけど、私にもコネがある。
当初は日本への送金が許されていた。

彼は株式を持っているだけで、会社の事業そのものには無関係。
会社は儲けを出し続け、結構な額の税金もちゃんと納めている。

しかし、コネの先にも人事異動があるし、その他の状況も変わりゆく。
徐々に許可される額が減り、審査の時間も長くなり、ついに止まった。

運転していた車がガス欠になったときを思い出す。
ああ、こんな感じだったなぁと私は感慨にふける。いやいや、感慨にふけっている場合ではないのだ。

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