アフリカの熱帯雨林で過ごす日々が好きだ。
列車の故障で一ヶ月にわたり足止めを余儀なくされた時も、私は幸せに過ごした。
明るくなったら目覚める。
暗くなり少ししたら寝る。
市場を訪れ、雲を見上げ、散歩をして、川を眺め、果物を見つけ、本を読む。
通信の状況が良ければメールを打ち、悪ければオフラインで文書をまとめる。
雨が降れば、人の背丈ほどのあの蟻塚はどう耐えているのかと観察に出かける。
夜は表現しきれないほどの満天の星空が広がり、ひとつも知らない星座を望む。
副作用が強いらしいので、予防薬を飲んだことはないが、まだマラリアに罹ったことはない。
蛇、毒蜘蛛、猿、コウモリ、いずれにも襲われてはないが、握り拳ほどのノミには刺された。
町で過ごすと、土曜日の夜だけは少しうるさくなる。
教会に人々が集い、オールナイトで踊り明かすから。
森で過ごすと、静寂に包まれるようで、実はそうでもない。
風のゆらぎ、木々の動き、生物の営み、すべてに音がある。
政治にも社会にも、まったく関心は芽生えない。
大事な人の日常に変わりがなければそれでいい。
退屈を感じたこともない。
割と何かしらはしている。
ふと思う。
日本でも、東京でも、そんなふうに暮らせばいいんじゃないかと。