私は子供の頃、忍者だった。
のっけからの虚言ではない。
荒れ狂っていた当時の地元の中学校に通うにあたり、私は父親から武道を習えと命じられた。
空手、柔道、合気道と、一通りの教室を選択肢に示され、目を引いたのは忍法の道場だった。
駅前からバスで 40 分ほど揺られた田んぼの真ん中。
中学の三年間、黒の道着を手にして私は通い続けた。
戸隠流の忍法で、手拳・蹴り・投げ・受け身・関節技をはじめ、身を隠す術から手裏剣まで、なんとも魅惑的な修行に勤しんだ。
入った中学校は狂気に満ち、強面の不良も揃い、幾度となく校舎の裏やトイレに呼び出されるも、お陰様で怪我をせず、させず。
その後の人生に役立ったかどうかは実感もなくわからないが、いわゆる古武道を少しかじることができ、良い経験だったと思う。